馬に通訳してもらった話

言葉は通じない。
まあ言語というのは記号なので
ある程度の概念や考え方を共有していなければ
機能させることが難しいのは当然だし
エゴにからめとられてしまって
自分とは異なる意見や感じ方を
受け入れる余裕のない人間が相手となれば
ほぼ絶望的である。

わたしが彼女に伝えたかったメッセージはただひとつ。
でも3年間どんなに訴えても通じなかった。
ところがそんな人でも動物とは
ちゃんと意思の疎通がとれている様子。
そこで、というわけではないのだけれど
彼女が大切にしている馬に会ったとき
自分の気持ちを話してみた。
というかグチってしまったごめんなさい。
「どうしてわかってくれないんだろうねぇ」
そのお馬さんも彼女との関係のなかで
まったく同じことを感じていたらしく
わたしの目をじっとみつめて
「うんうん、わかるよ」となぐさめてくれた。
優しいシンクロ。ありがとう。

そして翌日。唐突に彼女が話し出す。
「〇〇(←馬の名前)に教えられて気づいたの。
動物や人の能力に敬意を払うことなく
それを利用しちゃいけないって」
それな!!!!!
ずーーーっと通じなかったのに。
他の人間の感情や意見には無頓着をつらぬく人でも
馬からのメッセージになら耳を傾けることができるんだな。

人間とのコミュニケーションにおいて
馬に通訳してもらう日がくるとは思わなかった。
結局のところ、言葉じゃなくて
心と心で通じ合えるかどうかってこと。
人間に対しては支配欲と承認欲と偏見にまみれて聞く耳をもたない
そんな彼女の心すら溶かして素直にさせてしまう馬はすごい。
ますます尊敬がとまらない。
馬やその他の動物たちからもっともっと学びたい。
そして相手が人間であれ動物であれ植物であれその他の何であれ
心を開いて耳を傾けることをつねに忘れないように、と改めて。

※ 写真の馬はこの一件とは無関係です。